2014年4月14日月曜日

組織の現場に見る「文化」(池田 浩准教授)

平成26年度も新学期が始まりました。今後約二週間に一本のペースで「教員記事」をお届けします。第一回は心理学の池田 浩准教授です。

組織の現場に見る「文化」

 私は、集団心理学や組織心理学を専門にし、日頃、リーダーシップやチームワークの研究に取り組んでいます。そのため、学生の頃から、企業や病院、NPOなどの組織の現場によく足を運び、関係する方々に現場で生じている問題をお聞きしながら、主に調査などを行っています(たまに、集団実験もやっています)。

 これまで数多くの組織を訪問する機会がありましたが、いつも感じるのはその組織に特有な雰囲気が存在するということです。最近もある病院を訪問しましたが、印象の残る気持ちのいい組織でした。例えば、受付付近で私が担当者を待っていると、そこを通り過ぎる沢山のスタッフが挨拶をして下さり、また誰か要件をうかがっているか気にかけて下さいます。直感的に、病院を来訪する人を大事にしている組織だなあ!と感じました。当然、そこで働いているスタッフの表情は非常に明るく、患者さんとも笑顔で接しています。

 私の専門では、ある組織(集団)に所属している人達が共有している価値観や行動基準のことを「組織文化」(集団規範)と呼んでいます。「文化」と聞くと、多くの人は西洋や東洋の文化、あるいは具体的な地域をイメージして「ヨーロッパ文化」などを想像するかと思います。そこまでマクロ(極めて大きなもの)な文化でなくとも、私たちが所属している集団や組織にも、その集団らしさや特徴、雰囲気があり、それも心理学的には「文化」と見ることもできます。

 集団で望ましい「文化」を共有することの強みは何かと言えば、人々がその「文化」に基づいて自律的に考え、判断し、そして行動することができるということです。例えば、東日本大震災の際に、東京ディズニーリゾートでは沢山のゲスト(お客様)が来園していましたが、そこで働くキャスト(9割はアルバイト!)は冷静に避難誘導や安全確認の対応を行うだけでなく、「ゲストの安心と安全のため」という文化を共有していたため、一人ひとりがマニュアルにない行動を取り、多くのマスメディアでも賞賛されました(詳しい内容は、「集団心理学」の授業で)。

 では、組織の文化はどうやって創られるのかといえば、やはりリーダーシップです。先ほどの病院の看護部長さんは大変印象に残る方で、私との面談のなかで、たびたび「地域の方に愛される病院でなくてはならない」と強調しながら、そのために現場で働いている看護師やその他のスタッフの方がいかに働きやすくなるかを熱心に考えて取り組んでおられました。

 文化学科で学ぶ皆さんも、私たちの身近な集団や組織(学科、サークル、アルバイト)に流れる「文化」に注目してみると、興味深い発見事実が見えてくるかもしれません。


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